はじめに – QNAPからの卒業
長年使ってきたQNAP TS-873は、特に大きなトラブルもなく安定して動作していました。
ただ、いくつかの点で限界を感じるようになり、NASを自作PCに置き換えることを検討し始めました。
特に気になっていたのは次のような点です
- 録画PCとSMBサーバを統合したい
SMBサーバ(NAS)が落ちていると録画PC側での動画コピーに失敗する。両方が同一マシンであればその問題が解消できる。 - NASの故障時に安価に修理したい
QNAPは高価で、壊れたときに本体丸ごと買い替えるのは厳しい。自作なら部品単位で交換しやすい。 - 筐体スペースの無駄を減らしたい
使っているのは2.5インチHDDなのに、NASは3.5インチ前提。無駄なスペースが多い気がしていた。 - 静音性を高めたい
夏場はファンの音が気になることもあり、なるべくファンレスにしたい。
これらの課題を解消する方向で、自作NASのハードウェア構成を検討していきました。
ケース選定 – 2.5インチ8台を小型ケースで実現したい
第一の課題は「2.5インチHDDを8台搭載できる小型ケースを見つける」ことでした。
比較検討したのは以下のケースたち:
ケース名 | 容積 | 備考 |
---|---|---|
SilverStone SST-CS280 | 11.8L | 条件にぴったりだが高価 |
Fractal Design Node 304 | 19L | 少し大きくて高価 |
QUBE 500 Flatpack White | 33.4L | 機能的には魅力的だがサイズが |
Define 7 Mini | 33.2L | 同上 |
CH170 DIGITAL | 19L | 少し大きくてHDDは直接搭載できない |
MESHROOM S | 14.9L | 希少・高価 |
A4-H2O | 11L | サイズ良く、未開封中古をヤフオクで発見したことで、価格も問題なくなった。 |
結果的にA4-H2Oを採用。HDD搭載のために3Dプリントで取り付け部品を自作しました。
マザーボード – 静音・省電力・SATA拡張のバランス
以下の条件を満たすマザーボードを探しました。
- QSV(Quick Sync Video)対応:h.265エンコードのため
- 省電力:常時稼働するため
- PCIeスロット1本以上:チューナー稼働用
- 合計でSATA 8台以上に対応
比較した候補と結果
製品名 | 備考 |
---|---|
CW-NAS-ADLN-K | 高価すぎる |
ASRock N100M | スペックは良いがやや高め |
ASUS PRIME N100I-D D4-CSM | 最安、2つのM.2スロット活用でSATA 9ポート構成が可能、かつファンレス |
ASUS PRIME N100I-Dに決定。ファンレス構成で静音化も実現できました。
拡張カード
M.2 SATAカードは以下2つを選択しました。
製品名 | 備考 |
---|---|
M.2 からSATA、ASM1166 6ポート拡張インターフェイスカード | 6ポート、消費電力も抑えられているとか |
MZHOU M.2(A + Eキー)から2ポートSATA | 2ポート、(TrueNAS Scaleで使ったときは速度が出なかったような) |
これでマザーボード本体と合わせて、合計9ポートのSATA構成が可能になりました。
電源
SATAケーブルの本数や取り回しも考慮して、以下を比較しました。
製品名 | 備考 |
---|---|
NeoECO Gold NE650G M | フルモジュラー式で問題はなさそう |
SST-SX500-G | フルモジュラー式で問題はなさそう |
CS-700W IW-CS700-SFX | フルモジュラー式で問題はなさそう セミファンレスなのも良い |
最終的にセミファンレス対応の CS-700W IW-CS700-SFX を選定。ケーブルの柔軟性と静音性のバランスが良好。
SATAケーブルとHDDマウント工夫
SATAケーブルは超フラットケーブルを使用して取り回し改善しました。
HDDマウント部品はFreeCADで設計し、3Dプリント業者に出力を依頼しました。

小さな穴がHDD取り付け箇所で、片側をぶら下げる感じで取り付けます。
細長い穴を使ってケースにネジ止めします。

実際の取り付けの様子
ケースの前側は6カ所取り付け。(1箇所は下の電源コネクタと干渉する)
ケースの後ろ側は、多くの場所で干渉するので、外側の2カ所のみ。
狭いA4-H2Oケース内に8台のHDDがなんとか収まりました。
おわりに – ハードは理想に近づいた
この構成で、録画PC+SMBサーバ+DLNAサーバのベースが整いました。特に「静音」「省スペース」「SATA多数」の三要素は、QNAPにはない柔軟性をもたらしてくれます。
次回は、NAS OSとしてTrueNASを試し、その後Windowsへと移行した理由と構成について紹介します。
コメントを残す