はじめに
録画PCとNASを統合したい、という構想のもとで、ソフトウェア構成についてもいくつか試行錯誤を行いました。本記事では、最終的にWindows 11をベースに構築した経緯と、それまでに試したTrueNAS Scaleの評価についてまとめます。
要件整理
ファイルサーバとしての要件
- RAIDは不要だが、ミラーリング程度の冗長性は確保したい
- ファイル削除時に“ゴミ箱”のような退避機能がほしい
- 既設のUPS(OMRON BW55t)を活用したい
- DLNAサーバ機能も必要
録画PCとしての要件
- TVチューナが動作し、録画できること
- QSVを使ったh.265エンコードが可能であること
TrueNAS Scaleを試してみた
NAS専用OSとして高評価なTrueNAS Scaleをまず試用してみました。NAS用途としては非常に完成度が高く、以下の点で満足のいく動作でした。
- RAID1ミラー構成の設定が非常に簡単
- 共有フォルダの「ゴミ箱」機能も搭載
- Plexを用いたDLNA配信も可能(ただし、TV側での認識が遅いのはQNAP時代と同様)
ただし、以下の問題があり、最終的には断念することにしました。
- OMRON BW55tはサポートされておらず、UPS連携ができなかった
- 録画PCとしての機能追加に難があった
- Dockerは使えるが、Kubernetes主導の構成で自由度がやや低く感じた
- 録画ソフトやエンコードソフトの導入が煩雑
安定して稼働はしていたものの、「録画PC+ファイルサーバ統合機」としては扱いづらさが目立ち、継続利用を断念しました。
Windows 11での構築へ
録画PCが元々Windows 11だったこともあり、OSをそのまま活かして録画・エンコード・ファイル共有までを統合する方向にシフトしました。
ミラー構成の検討
Windowsでのミラー構成には以下の選択肢があります。
ミラー構成の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
記憶域スペースのミラー | ・即時ミラーすること ・OS標準であること | PC破損時など、他PCでのストレージ読み取りが困難な場合がある。 |
ダイナミックディスクのミラー | ミラー機能あり、移行性も比較的良好 | 非推奨技術であり、トラブル時は全スキャン必要。 |
手動/ツールによるミラー(非同期) | 標準フォーマットを使うため、ディスク単体でも読み出しでき、復旧しやすい。 | リアルタイムミラーではない。 |
最終的には、復旧の容易さと構成のシンプルさを優先し、FreeFileSyncを使った非同期ミラー方式を選択しました。
FreeFileSyncによるバックアップとバージョン管理
- 夜間に1回、自動でミラーリング実行
- 削除されたファイルは“バージョン管理”機能で別フォルダに保管(=ゴミ箱代替)
UPS連携(OMRON BW55t)
Windowsベースにしたことで、OMRON公式の PowerAttendant Basic Edition が利用可能となり、停電検知時の自動シャットダウン等が構成できるようになりました。
DLNAサーバ構築(Universal Media Server)
DLNA配信には、TV側の認識速度から Universal Media Server を採用しました。
トランスコード対応
REGZA-48X8900LでH.265動画が直接再生できなかったため、
DLNA配信時に必要なトランスコード設定を行いました。
具体的には、TVの識別情報に合わせたレンダラー定義ファイルを作成しました。
ファイル名:TOSHIBA-REGZA-48X8900.conf
RendererName = TOSHIBA-REGZA-48X8900
RendererIcon = tv.png
UserAgentSearch = DLNA/1.0 DLNADOC/1.50 UPnP/1.0
SupportedVideoCodecs = h264, mpeg2video
SupportedAudioCodecs = mp3, aac
TranscodeVideo = MPEGPSAC3
TranscodeAudio = LPCM
この設定により、H.265ファイルはトランスコード対象となり、TV側でもスムーズに再生可能になりました。
録画機能
Windows 11上で従来使用していた録画ソフト・エンコードツールがそのまま使用可能で、
特に構成の変更も必要ありませんでした。
QSVによるh.265エンコードも動作しており、録画・配信・保管の全てが
1台のWindowsマシン上で完結しています。
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